【コーチング導入事例】複十字病院 人材育成プロジェクト「職員のコミュニケーションを変える決断をした理由」教育委員会委員長 吉田 直之先生


コミュニケーションは普遍的なことで、どこでも誰にでも必要

我々医者に関して言えば、患者さんが説明を理解できなかった時に「自分のせいだ」と思う医者は少ないでしょう。わからないのは、患者さんに原因があると思ってしまう。しかし医者と患者さんでは医学的知識に差があるわけで、専門用語を並べられても患者さんはわかりません。たとえ患者さんが「はい」と答えたとしても、「わかりました」という意味ではないことが多いのは、私自身も感じるところです。「この前も同じことを言ったはずなのに」とよく思います。でも結局、患者さんを理解させることができていないんですよね。

私の専門は呼吸リハビリテーション(以降リハ)ですが、リハから脱落してしまう患者さんが多いんです。リハ自体はそんなに難しくないのですが、患者さんにとってはリハを継続することが難しいようです。呼吸リハの目的は、身体を動かすことで息切れを軽くし、QOLの改善と生命予後悪化の防止を図ることです。身体を動かして息切れが軽くなったとしても、身体を動かさなくなるとその効果はたちまち消えてしまいます。ですから、なぜリハを続けなければいけないかを患者さんに理解してもらう必要があります。患者さんは、続ける理由がわかればリハに取り組みますが、「息切れが強いんだったら身体を動かしなさい」と医者から言われただけでは「それなら動かなければいいんだ」と思ってしまいます。ところが慢性呼吸器疾患では、身体を動かさないでいると息切れが強くなって動くことが辛くなっていきます。ずっと寝て生活できればいいですが、お風呂に入ったりトイレに行ったりしなければいけませんよね。日常生活で行うこれらの動作が辛くなる前に、身体を動かすように患者さんを説得するコミュニケーションスキルが必要になります。医学的な専門用語を患者さんが理解できる言葉に変えて、説明内容の質も落とさないで患者さんに理解してもらおうとすると、やはり時間がかかってイライラしてしまうときが私にもあります。でも、理解した上で納得してもらえたときは、「良かったなあ」と思いますよ。

また、リハを受けている患者さんに注意するときは、私はポジティブ・レスポンス、つまり「褒めて伸ばす」を心がけています。悪いところばかりを強調するのではなく、最初にその人の良いところ、優れているところを挙げます。「あなたのこういうところはとても良いけれど、ここは問題。こうすればもっと良くなる」と伝えるようにしています。

コミュニケーションは普遍的な手段です。コミュニケーション・トレーニングによって得られたスキルは、私生活でも役に立つだろうと思いますし、人を相手にするならどこでも必要だと思います。

吉田 直之(Naoyuki Yoshida)
複十字病院 呼吸ケアリハビリセンター長
https://www.fukujuji.org/

 

 

自分もコーチをつけてみる