心に情熱の火を宿して
修行中の身です、と笑顔をこぼす中にも確かなパワーと確固たる決意を感じる林さんとの30分。
―まずは、座右の銘を教えてください
色々浮かびましたが、「パッション」と「魂」かなと思います。研修企画などを担当しているのですが、「相手の心に火をつける仕事」という言葉が好きでして。研修には企画担当者や組織の想いがあり、その想いが強いほど、響くものや伝わることがあると思っていて、いかにして参加者にわたし達の想いを伝えるのかを強く意識しています。「林さんって熱いんですね」と言われることがいつしか嬉しくなっていました。わたしの想いが伝わったんだなって感じるんです。
―よく聞かれる質問かもしれないのですが…就職活動の時に一般企業ではなく国家公務員を選択した理由を教えてください
元々、法学部で法律の勉強をしていてその道を目指そうとしていました。総合職として採用になり各省庁の面接を受けに行った時に、国をよくしたいという想いがあるにも関わらず、官公庁には何となく燻っているというか、疲弊している人が多いなという印象だったんです。この方々がもっと輝ければ国がよくなるはずなのに…と思ったんです。そのタイミングで出会ったのが人事院でした。
人事院は、公務員を支える仕事ができます。28万人ほどいる国家公務員に直接アプローチができる唯一の場所です。国家公務員が変わればきっと自治体も変化するだろうし、自治体が変われば民間も変容していくかもしれないと思って、わたしの目指すべき場所は人事院だ、ここだ、と感じました。
―入庁してみていかがでしたか
難しさやもどかしさを感じることが多かったです。影響力を与えられる立場はあるのに、なかなかうまくいっていないんです。もっと我々ができることや頑張ることがあると修行の身です。
毎日が修行の日々
―今は、どんなお仕事を担当されているのですか
現在は、全国家公務員の研修を担当しています。各年代の研修を立案しています。新任局長や新人など様々な階層を対象にした研修を考えています。どういうスキルが必要なのかを考えながら研修を導入しています。
実は、わたしは今の部署に一番来たかったんです。着任できた時はとても嬉しかったです。ここに来るためにたくさん勉強していました。例えば、マネジメントやリーダーシップ、メンタルヘルスやキャリア形成など。本棚が二個増えてもおさまりきらないくらいです。好きな仕事ができて嬉しい反面、学んできたことがそのまま生かせるほど現実は甘くなくて、この層に響く研修とは何だろうと悩むことの方が多いかもしれません。失敗もします。毎日が修行のようです(笑)
―悩みは尽きないものですよね…そもそもなぜ、この研修推進課という部署に来たかったのでしょうか
最初は就職活動の時に感じた、「国家公務員をもっと活躍させたい」という想いが最初だったように思います。3年目くらいにいろいろありまして。正直な話、辞めようと思っていました。その時に受けた研修で言われたことや隣に座っていた同じような経験をした先輩がかけてくれた言葉がわたしを踏みとどまらせてくれたんです。自分は一人じゃなかったんだと。響く言葉があったんです。研修にはそういう力があるんだと。
皆が知っておくべきことや組織として考えるべきことへのアプローチ方法の一つとして研修には思いがありました。
わたしと同じ辛さは誰にも経験してほしくないものですが、わたしにしかできないことや同じように苦しんでいる人に寄り添えるようにとは常々思っています。
―今、楽しく仕事に取り組んでいらっしゃるとお伺いしましたが仕事の醍醐味を教えてください
やはり、誰かの心に火をつけることができる瞬間があることですかね。先日、20代向けのキャリア支援研修を実施したのですが、その事前アンケートで仕事を辞めたいと悩んでいた方が一日の研修を通して違う視点が見つかってもう少し頑張ろうと思えたと言われたり、受講した方から連絡をもらったりすることが、とても励みになっています。キャリアは早い遅いでもポストによるものでもなく、自分が納得できる、輝ける自分を“自分で”考えるものですよね。人の目は気になるかもしれませんが、組織や日本の未来ことを真剣に考えている人が報われて欲しいと思っています。辞めてほしくない人材が霞が関を去っていく姿を何度も見てきたので、余計に想いが強いのかもしれません。
本気でいるからこそ、伝わることがある
―様々なことに勉強しチャレンジすることは時間も勇気も必要かなと思うのですが、林さんが学び続ける理由は何でしょうか
誰かに何かを届けたいという気持ちがきっとわたしは強くて、その為には自分の本気さが必要でそれがないと伝わらないと思っているんです。時たま「林さんってふざけてる人なのかと思ってた」なんて言われることもありますが、一緒に働くうちに「林さんって熱い人なんだね」と言ってもらうこともあります。真面目に考えているんです。わたしの弱みでもあるんですが、なんでも全力投球でド直球にいってしまうんです。その辺りは今変わろうとしています。その時々で必要な言葉って違いますもんね。わたしにとっては組織や人の為の発言であってもそう届くかは別ですもんね。家族には不器用だねとよく言われます(笑)
―何事も全力投球な林さんですがプライベートの時間はあるのでしょうか
旅行が趣味なのですが、全国に国家公務員がいるので各地域の働く人が気になってしまいます。旅先のサウナでキャリアの相談をされた、なんていう経験もあります。キャリアコンサルタントの勉強をしている関係もあってすぐ、キャリア相談にのってしまうんです。あの子は今どんな人生を歩んでいるのか気になります。東京のサウナで出会えないかな(笑)
辞めてほしくない同期や後輩を見送った経験からキャリアコンサルタントの勉強を始めたんです。自律的なキャリアについて知って欲しいなと思って。国や組織のことを真剣に考えている仲間をネガティブな理由で失うのは辛いですよね。キャリア支援の担当もしていたのでちょうどいいタイミングだなと。
―今のビジョンや夢は何でしょうか
一番大切なものは組織と人だと思っています。それは国家公務員でも変わらないものだと思います。霞が関が変わればきっと世の中が変わるはずなんです。
国家公務員は何かしらの熱い思いをもって、入省してきたのではと思っているのですが、何らかの理由でそのマインドが薄れてしまうことが多々あるのではと感じていて。やらない、やれない理由を探すより自分が多少苦労してもその先に何かいいものができるのであれば積極的に挑戦していって欲しいなと思っています。
―林さんの今後の夢、教えてもらえますか
霞が関の人事のプロになることです。人事院の林に聞けばなんでもわかる、という存在になりたいですね。もっと人事院のことも知ってほしいし、頼られる存在になりたい。そのプロフェッショナル集団の一人でありたいなと思っています。
人事院
林 美穂(はやし みほ)
人事院 人材局 研修推進課 専門官 ※取材当時
大学で法律について学び総合職として人事院へ入庁。給与局や公平審査局、職員福祉局を歴任後人材局へ異動。研修推進課企画班専門官として公務に求められる有為な人材の育成を促進していくための多様で効果的な研修を企画・実施。加えて、国際的な業務に対応できる人材の育成のための海外留学制度を担当。