会社員からフリーアナウンサーへ~次がないからこそ、常に最高の状態を整える~【石岡麻奈美さんインタビュー】

アンカーとしての責任感

――石岡さんがフリーアナウンサーに転身されて2年も経たないうちに既に多くの仕事をされています。様々な仕事が来る理由をどのように考えていますか。

結構ストイックなのかもしれないです。どんな仕事も全てできる限りの努力をして臨みたいので、本番より練習の方が辛いくらいです。そこまでしなくていいよとスタッフさんに言われたこともあります(笑)。

私の仕事というのは「一番最後」のものが多いんですよね。番組の企画があり、スポンサーがつき、番組構成が決まり、台本も決まる。プロデューサーや制作スタッフの方々がいて、VTRがつくられて、それに合わせて実際に文字に起こされる。数多くの過程を経て、一番最後に「これを読んでください」と私に仕事がくるんです。

良い意味でのプレッシャーや責任感を持って仕事をしています。良いものを作って視聴者の方に楽しんでもらいたいという思いが強いんです。

――リレーのアンカーみたいですね。そう思えるのはなぜでしょうか?

メーカーで働いた経験があったからでしょうか。モノづくりの企業に勤めていたから、商品が作られるまでにどれだけの労力と時間がかかっているか、過程がよく分かります。

アナウンサーの仕事でも、私に原稿が渡されるまでの過程を思うと気が抜けないんですよ。

だから、自分の出番以外の撮影にもついて行きます。例えばインサートと言って、食べ物や景色だけを撮影するシーンも見させてもらいます。番組を作っているスタッフさんの思いを知りたいんですよね。見させて頂くことで、スタッフさんが番組として伝えたいことがわかります。

それからこれは副次的ですが、その過程でスタッフさんとコミュニケーションをとることができます。私の職業は特に初対面の場合が多いので、いかにスタッフさんと時間を共有し濃い時間にできるかを大切にしています。控え室にいたらもったいない。やるからには、限られた時間を最大限いかしたいと思っています。

次がないからこそ、常に最高の状態を整える

――フリーアナウンサーとして日頃から意識されていることはありますか。

2つあります。一つ目は独自の感性を大切にすること。
アナウンサーは私以外にも沢山います。他の人でもなく、AIでもなく、私にしか出せない独特の言い回しや、美しく感動するようなニュアンスを表現することが大事だと思うんです。
だからオフの日でもオフじゃない。
常にアンテナを張って、ほとんどの人が気にかけないようなところでも立ち止まって、自分がそのとき感じるままにどう表現するか考えたりして感性を磨いています。

もう一つは、人だけでなく自分を大切にして、無理をしないことです。
この仕事をしていると、街頭インタビューなども含めて年間1000人以上の方にお会いします。すべてが一期一会。人との出会いに感謝し、お話する時間を毎回大切にしています。
また、アナウンサーは自分自身が商品でもあります。最大限のパフォーマンスを発揮するためにも、自分の身体や気持ちを大切にしています。ストイックなので自分を追い込みがちですが、そればかりだと集中力が途切れるし、体も疲れてしまい、最高のパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。ある程度練習したら自分を認めてあげた方が高いパフォーマンスを継続的に発揮しやすいと気づきました。

フリーアナウンサーは、いつも仕事が保証されていない状態です。
最高のパフォーマンスを発揮できなければ次がありません。
次がないからこそ、最大限の努力と無理をしすぎないバランスを大切にしています

 

石岡 麻奈美 Manami Ishioka

大学時にオーストラリアに留学。大学卒業後、企業で営業や社内研修の講師等に従事。現在はフリーアナウンサーとして、アナウンサー、リポーター、キャスターとして、また、CMやドラマにも出演するなどテレビを中心に幅広く活躍中。