パルクールは壁と向き合い、自分と向きあうプロセス –パルクールの本質−【前編】



大事なのは、自分はどうしたいか

−パルクールと出会う前と後で、変化したことはありますか?
考え方は180度変わりました。もともと自分の殻を破りたいと考えるタイプだったんですけど、それをなかなか外に発散できていなかった。それを吹っ切る原動力となったのがパルクールでした。パルクールには型にはまらない自由があるので、「こうしなきゃいけない」というところは取れました。パルクールは同じ場所を使っていても競わないし、それぞれ動きが違うんです。常にそこには別々の個性が集まっている。その中で、あ、こういう決まりじゃなくていいんだ、自分はこれでいいんだ、あの人はそれでいいんだと考えるようになりました。仲間とやることによって、常にインプットとアウトプットを同時に共有することができる。それで、他の価値観や自分以外の視点を受け止めやすくなり、自分と向き合うようになるんじゃないかと思います。

−なぜパルクールをやると自分と向き合ってしまうのでしょうか。
自分の世界観の中でやっていくというのがあるかもしれないですね。他のスポーツというのはスポーツの中に目的というのが内包されていて、それは試合に勝つということだったり、記録を出すということだったりだと思うんですけど、パルクールは心と体を鍛えるというモットーしか決まっていない。パルクールはあくまで体と心を鍛える手段でしかないんです。じゃあ何のためにやるのかは自分で決めないといけない。パルクールを行う目的を作るのは自分です。例えば、体を柔らかくしたいとか、自分が今やっている分野をより発展させるためにパルクールを通じて鍛えたいとか、スタントマンとしてのパフォーマンスを上げるためにとか。自分はどうしたいかなんです。

−佐藤さんは何のためにパルクールをやっているのですか。
一つはSASUKEのためにパルクールをしている。その逆も然りなんですけど。そして今は特に関わっている子どもたちに何かあったときに自分の身を呈して守れるような強さ、究極は自己犠牲とかそういうものにつながってくると思うんですけども、そういったものを容易くできるような心構えというか、体をつくりたいなと思っています。

“l’art du deplacement”(移動の芸術)という言葉を作ったヤマカシ(パルクールの実践者の集団)の何人かとお会いしたことがあるんですけど、彼らの理念は万能な強さを得ること。自分の大切な友達や家族を守れる力として、トレーニングを始めた。そういった先駆者たちの姿を見て影響を受けたということもありますし、シンプルにカッコいいというのも、パルクールを始めた当時はあったかもしれないですね。]