今回はSENDAI X TRAINの共同代表である佐藤惇さんへのインタビュー後編です。後編では佐藤さんが考えるパルクールの可能性についてのお話をお届けします。
−実はパルクールはリハビリテーションと親和性が高いらしいですね。
パルクール仲間に作業療法士がいるので、専門家でない僕が言うのはどうかと思いますけどリハビリは今もっているものをどう生かすかということなんですよね。腕がなくなってしまったけれど、腕があったのと同じような水準まで高めるにはどうしたらいいかと考えてそれを訓練していく。
そのプロセスがリハビリですが、自分がどうしたいのかという目的がそこに乗っからないと実行できないですよね。患者さんが「別にこのままでいいです」となっちゃったらそこで終わりなんです。昔みたいにテニスをできるようになりたいです、習字をできるようになりたいですという目的があってはじめて、そのために順序立ててトレーニングをしていきましょうとなる。
パルクールも同じです。体の動かし方という手段は色々ある。ただやるだけでは、楽しみや趣味でしかなくて、自分がどうなりたいかという目的があってはじめて、それを達成するためにこう動いてみようという風に、自分のスタイルが作られていく。リハビリとパルクールは考え方という点でも同じですし、実際に体を動かすという点においても同じです。パルクールの基本は四肢で体を支えていくこと。両手、片手、両足、片足、もしくはお腹や背中を使って動くという基礎運動がパルクールの中には含まれている。
腰の痛いおばあちゃんが、リハビリしましょう、トランポリンしましょうと言われても無理だけど、パルクールは色々な要素が含まれているからご年配の方でもできます。座っている状態で体を動かして、横の椅子に移動するだけでも言ってしまえばパルクールなんです。自分が目的に設定した場所に移動しているわけですから。世間一般で言うと、アクロバティックな動きというのがイメージされがちですが、その人が目的とすることに対して適切な動きであればそれはパルクールなんです。
−そうすると、みんなパルクールをやっているということですか?
そこで、パルクールなのが何なのかという「引き」の視点は大事になってきます。万能な心身を目指す筋道であるかどうか。そのモットーがないとパルクールとして成立しないんです。誰しもがやっていることだけど、それに定義付けや概念を決めて、その中でさらに自分自身の目的を見つけていくというのがパルクールです。