BBQを突き詰めたら世界平和にたどり着いた話

 

今回は大手コンサルファームの人事として働く傍ら、BBQ研究家として活動している岩井さんにお話しを伺いました。

 

私の人生はBBQでできている

 

私とBBQの出合いは16年前になります。20代の頃にルームシェアしていた家に広いルーフバルコニーがあって、そこでたまたまBBQをするようになったことがきっかけでした。

当時人とのコミュニケーションが苦手だった私にとって、BBQをすることが初めましての人と仲良くなる訓練になり、新しい友達を増やす最良の機会になっていきました。それ以降、私の人生を左右するような出来事は全てBBQがきっかけになっています。現職のコンサルティングファーム人事の仕事もBBQで得たご縁がきっかけですし、妻ともBBQで仲良くなり交際しました。現在の交友関係の殆どは、BBQで仲良くなった人ばかりです。BBQを続けていると良いことづくめなんです(笑)。BBQのことを365日考え、年間41回BBQを開催。今や人生や生活と切り離せないものになっています。

 

BBQの絶対条件はコミュニケーションにある

 

ところで、BBQの定義を考えたことはありますか?BBQの絶対条件は何でしょうか?
実は、何をもってBBQと定義するかはまだ統一見解がないんです。

約10年前に日本バーベキュー協会のBBQ検定に参加した際、会長の下城民夫さんの言葉に衝撃を受けました。

「BBQはコミュニケーションであり、一人ではなし得ない。一人焼肉はあるけど、一人BBQはない。」と。2人以上でなければBBQではない。人が集まれば、そこにコミュニケーションが発生しますよね。BBQは2人以上でするものですから、BBQをすることはコミュニケーションすることにつながるわけです。実際に、BBQを通してチームビルディングも行っています。BBQはただ肉や野菜を焼いて食べるだけではないのです。

BBQ研究家は料理研究家の1つのジャンルと考えております。料理のレシピや調理技術といった「おいしい」BBQ研究家は料理研究家の1つのジャンルと考えております。料理のレシピや調理技術といった「おいしい」を追究している人は沢山いますが、「楽しい」を研究している人はなかなかいないですよね?そこで私は「楽しいBBQ」を研究テーマとすることにして、実験実証を繰り返してきました。「楽しい」という言葉は定性的で、人それぞれ楽しいと思うポイントが違いますよね。では、どんな要素があれば「楽しい」が得られるのか?

これを考え抜いて、参加者のほぼ全員が「楽しい」と思ってもらえるまでに再現性を高めました。楽しいBBQを提供して、皆が幸福感を味わえる場づくりが私のミッションです。

 

BBQにはストーリーが重要

 

私のBBQでは、ただ飲み物や食べ物、調理場を用意するだけにとどまりません。随所に、皆が「楽しい」と思える仕掛けを散りばめています。誰かが主役になれる仕掛けや初対面の人同士で必然的にコミュニケーションが生まれる仕掛けが計算し尽くされています。

例えば、複数人でタープ(日光や雨風を防いだりするための布状の屋根)を張ってもらう作業がありますが、敢えてざっくり投げるんです。そうすると、どうやって進めようかと話し合い、協力し合う関係性が生まれてきます。

もし私が1から10まで全て仕切って指示してしまったら、そのような関係性はできないんです。だから、意図的に「余白」を作る。そして、コミュニケーションを通じて余白を埋めていく。これが「楽しい」につながるんです。

仕掛けを用意して皆が盛り上がっているBBQでも、隅の方で一人ぽつんとされている方もいらっしゃいます。

私はそういう方を見つけて、簡単だけど目立つ仕事をお願いするようにしています。

それは、肉が焼けたタイミングで蓋を開けてもらう仕事です。蓋を開けるともくもくとした煙とともに、美味しそうな匂いが一気にたちこめます。必然的に皆の注目を集め、歓声があがるシーンですよね。写真撮影大会が始まったりもして。そうすると、蓋を開けた人が主役になるんですよ(笑)。

さらに、その人に肉を切ってもらい、肉を取り分けてもらう。そうすると、その働きに対して皆から「ありがとう」とか「切るのが上手だね」とか、賞賛の声が飛んでくるんです。これを経験して楽しくない人はいません。BBQのプロセスで、その人の承認欲求にまで応えられてしまうんです。

このように皆が楽しいBBQを目指して研究してきましたが、過去には当然失敗もありました。
昔主催したBBQで、目玉のメニューとしてA5ランクの肉を用意したことがありました。もちろん高いので、全員分は用意できず、少量の提供となります。

肉が焼き上がった時、それを目当てにやってきた人たち数名が自分の取り皿に大量にとっていってしまいました。売り切れてしまったので、必然的に、他の人は食べられなくなりました。

その時更に驚いたのは、その人たちは皆が食べたかったA5ランクの肉を残してしまったんです。他に食べたい人が大勢いたので悲しい気分になりました。そこからは取り皿を撤廃。大皿1つに料理をよそって、皆フォーク一つでつつく形にしました。フォークは一人ひとつなので、ストックすることができずフードロスも起きづらく平等ですよね。一人占めすることができませんから。

皆でつつくようになると、料理をシェアしている一体感も生まれて、コミュニケーションが発生する相乗効果を発見しました。怪我の功名といった感じですね。

これらの経験を通して私が学んだことは、皆が連帯感を持って楽しめる仕掛け、コミュニケーションを随所に散りばめることで、「楽しい」は創れるということです。全員が楽しいBBQには、ストーリーが重要なのです。

主役は参加者で、主催側である私は黒子役、裏方です。そういった観点では、BBQの主催は私の本業である研修の企画運営と類似していると感じます。昔から観察することが得意で、BBQでも参加者の表情や動きをつい目で追ってしまうのですが、そういった私の特性も場づくりに寄与していると考えています。

 

BBQを突き詰めたら世界平和が見えてきた

 

こうして16年間、楽しいBBQに本気で向き合い続けてきた結果、行きついたのは世界平和でした。飛躍して聞こえるかもしれませんが・・・。

前述したように楽しいBBQの主役は参加者であり、主催者が自己陶酔していては成り立ちません。自分のためにBBQに向き合い続けることはできないと思ったときに、世界平和を目指そうと思うようになったんですよね。自分はもう十分幸せなので、他の人たちの幸せ、平和を願うようになったのです。

今世界でも戦争が続いていますが、戦争は人と人、国と国の間に線を引くことから起こるのではないでしょうか。線を引かなければ争いようがないけれど、既にできてしまっている線をとっぱらうことは難しい。それなら、どこに線がひいているか分からなくなるほど線を引いて、全員が色んなコミュニティに参加して、敵も味方もなくせばいいのではないかと。人と人とがベン図で重なりあっているようなイメージです。BBQは性別も出身も世代も宗教も関係ありません。多様性のある人たちが集まってコミュニケーションして楽しい空間と食事を共有するものです。そこに私は可能性を感じています。

私のBBQ人生第2章は、世界平和です。BBQという強力なツールを通じて、本気で世界平和を目指したいと考えています。

 

岩井 慶太郎

<経歴>

飲食業界やリクルートでの人材ビジネスを経験後、現在は大手プロフェッショナルファーム(コンサルティング)の人材育成部門にて勤務。

本業の傍ら、BBQイベントやBBQ施設開発のプロデュースを行う「Share Style BBQ」の代表としても活動。

組織の枠を越えた人材交流やコミュニケーションを目的とした企業向けのBBQ企画や、

地域食材のPRを目的にしたファン交流企画など様々な企画を多数手掛け、延べ参加人数は10,000人超。