今回はオフィスKATSUHARAの代表勝原裕美子さんにインタビューさせていただきました。その内容をお届けいたします。
–著書『組織で生きる』では、倫理観について書かれていますが、一般企業で倫理観について学ぶことは少ないように感じます。医療者や看護師にとって倫理観がすごく重要な要素としてお考えなのでしょうか。
倫理観というより、マネジメントをする上で、倫理的に迷うことがあったとき、あなたはどう生きますか?ということを書きたかったんです。看護師は、基礎教育の時から倫理について学んでいて、倫理的感性は養われてきているんです。患者さんと向き合う中で「こういうやり方でいいんだろうか」とか、「思いに気づいてあげられなかったんじゃないか」とか思いながら、成長していきます。管理側になると、さらに組織のためとか、患者さん全体のためにどうしたらいいのかを考えなければならない。そうすると、ひとりひとりの患者さんと向き合うことができなくなるというジレンマも生じるんです。
私が看護師として現場にいた頃はいつも未来を想像していました。職員や組織の未来を考えた時にこの判断はどうなのか、今の自分の選択の5年先、10年先の影響を考えながら、今と未来を常に行き来して考えています。
–勝原さんが看護部長に選ばれるまでの背景を教えて頂けますか。
前任の看護部長と初めてお会いして仕事をした時、その夜のうちに誘われたんです。毎年1、2回お会いする機会があったんですが、「研究者が天職だと思っているから行くつもりはない」と6年間断り続けてきました。「私は臨床経験少ないし(私が行ったら)病院潰れますよ。」と、行けない理由をいくつも挙げました。年月をかけて、行けない理由をひとつずつ潰していった感じです。遠いし、知らない土地だし、家族や友達もいないし、臨床経験少ないし、研究やりたいしとか。臨床の経験は本当に少なくて、新人の頃だけ。そんな私が、看護部長になれると思っていませんでした。
–臨床経験が約1年の方が看護部長になるというのはあまり聞きません。ちょっと答えにくい質問かもしれませんが、勝原さんが人から優秀だと言われるのはどんなところだと思いますか?
こんなところに目をつけるの?と言うところに着目して、アウトプットしているからじゃないかな。抽象度の高い話をされると、具体的にどういうことか質問したり、過去の経験を聞いたりするから、相手に聞いてもらえたと思ってもらえるんだと思います。話を聞きながら抽象化と具体化を繰り返し、現象を自分なりに説明できるように考えています。