-本を読んでいてすごく不思議な感覚でした。勝原さんの脳が、どういう構図になっているのかにすごく興味があるのかもしれません。「こうだ!」という主張があれば、それについてお伺いしたいんですが、そういう本でもないですし。
『看護師のキャリア論』には大事にして欲しいことが書いてあります。看護師でない人が読んだら、違って聞こえるのかもしれないですね。私はデータをとらせていただいて研究したからには、アウトプットすることにこだわっているんですが、アウトプットしないのは、相手に対して失礼だとも思うんです。たくさんの人にヒアリングさせていただいたり、時間を使って言いたくないことまで話していただいたりすることもあります。そのような具体的な現象を抽象化して、起こりえることや考えなければいけないこととしてまとめるのが、私の責務だと思っています。
–『看護師のキャリア論』には、テーマに沿ってペルソナが出てきますよね。読み進めるうちに、「これが言いたい」、「こうあるべき」ではなく、色んな切り口でどう考えるか、自分と対話するような感覚になりました。
そう感じていただけるよう意図しています。忙しい日常がどんどん過ぎていく中で、立ち止まってもらいたいんです。私塾を開くとしたら、教えるというベースの部分が3分の1、ディスカッションをして自分と違う価値観や考え方のシャワーを浴びる時間が3分の1、残りはそこから考える時間になれば良いなぁとイメージしています。
-看護師の方は勝原さんから何を学びたいと思ってきている人が多いのでしょうか。何を期待してこられているのか、凄く興味があります。
何を期待しているんでしょうね(笑)。
勝原さんだったら何か言うだろうとか、人と違うことを話すかもしれないとか何か学べるかもしれないとか思ってきているのであろうから、それには応えないといけない。自分のため、患者さんのため、地域のため、これからの世の中のためとか看護師さん達が考えるようになったら、みんながちょっとでも幸せになるだろうとか。看護師が誇りを持って仕事を続けるために、自分の力を活かせればいいなと思っています。
達成するためではない、ひとつのツールとしての「学び」
-本を書かれたり、研究を始められたり、プロジェクトを始めたりされるとき、勝原さんの場合どのような時にスイッチがオンになるんですか?
いつもやりたいことが溢れてるんです。今年はワクワク感が少ない仕事は減らして、本当にやりたいことをやろうと思っているんですが、それだけでスケジュールが溢れちゃって、何かやめなければいけないくらい。
先日、仲間と自分の好きな所を言いあうというのをやったんですね。自分の好きな所は、学び続けられるところだと思ったんですが、それは小さいころからごく当たり前だった。学ぶと技術が増えるとか、知識が増えるのもありますが、「仲間が増える」ということがすごく大きいんです。仲間が増えると、話をする中でアイディアが浮かんで、「この人とだったらこんなことができそう!」とか思っちゃう。だからやりたいことも増えていくのかもしれません。
-勝原さんは、どんなことやっている時が1番ワクワクしますか?
新しいことを仲間と一緒にやろうとしている時でしょうか。今はやることをそぎ落とそうとしているので、ワクワクしないことの方が少ない。感覚としては、「種蒔き」なんです。昨年、仲間に「勝原さんは種を蒔く人」と言われたんです。種は蒔くけど種が大きく育つまで見届けようとはあまり思っていなくて、ちゃんと育つとわかったら誰かに任せているような感じです。
-どんな種を蒔きたいと思っていらっしゃいますか?
みんなの隙間にある、言語化されていない部分でしょうか。倫理観が大事だとは言うけれど、患者さんのためと組織のためが矛盾したときにどう判断するかとか、組織の管理者になったら経営の事ばかり言われて嫌なのはなぜなのか、どういう時だったらいいのかなど。感情や具体的な話のレベルではたくさん言葉があるけれど、それを抽象化して、相手が考える種にしたいんです。人との隙間とか、グループとグループとか、組織と組織とか、そういった「間」に種を撒きたい。私が向き合う対象はいつも人ですね。