ピアニストは人前で高いパフォーマンスを発揮するために何をしているのか【前編】小池彩夏さん


−小池さんは、今回のインタビューにだいぶ葛藤があったようですね。

私は著名なピアニストでもないですし、ピカピカの経歴もなく、天才肌でもないと思っています。日々ピアノや生徒達と向き合いながら、少しずつ勉強をしています。有難いことに演奏の機会が定期的にあり、プロとしてのピアニスト活動も細々とさせて頂いている状況です。こんな私がお役に立つのだろうかと。

-私たち、プロフェッショナルな人たちが仕事で結果を出すためにどんな事をしているのかに興味があるんです。以前小池さんのお話を伺ったとき、一見別世界に見えるピアニストと経営者は親和性が高いのではと感じる事があり、今回ご協力いただきました。

「見られる側」ではなく、「見る側」に立つ

−ピアノコンサートというのは、当然ながらプロの演奏をみんな聴きに来ているわけですよね。打鍵を間違ったら演奏全体に響くこともあるわけで、すごいプレッシャーなのではと思うのですが、どうですか?

プレッシャーは勿論あります。でも人前に出るからには乗り越えたい。いつもそう思っています。一昨年前に小学校の恩師が亡くなったんです。その知らせを受けた直後の演奏会で「今日は先生のために弾こう」と思ったら、途中失敗したんですけどその後冷静になれてリカバリーできたことがあって。それまでは不特定多数の顔の見えない人たちが聞いていて自分を批評していると常に思っていました。でも、自分が向き合っている姿勢が少しでも伝われば良いかなと思い出してからはもうありのままでいいかなと。大きなホールでは今でも毎回緊張するんですけど、誰かのために弾こうと思っています。

−そこのステージ(段階)に到達するまでにどのくらいかかったんですか

期間は分からないですが、きっかけは保育園や老人ホームでのコンサートにスポンサーさんがついた事。始めて1,2年くらいは試行錯誤で、お客さんも近いので常に緊張していました。でも、一緒に演奏をする仲間もいたし、演奏を聞いて涙を流す人もいたりとかして。自分の中で少しずつ変わっていったんです。

すごく不思議で、認知症が進んだ方のほうが演奏中の反応が大きいんです。小さい頃の記憶を思い出すのかな。『赤とんぼ』や『ふるさと』を聞いて声を上げて大泣きしていたりして。そういう環境で弾かせてもらえたことでピアニストとして自分を必要として貰えている感覚があって、緊張よりも音楽を届ける意識のほうが強くなった。それからは、もう緊張していられなくなって、聞いてくれて有難い気持ちの方が強い。今ではおじいちゃんおばあちゃん、子供たちがどんな顔をしているんだろうと見ながら弾いたりしています。

−私もプレゼンや講演など人前に立つときに「見られている」と思って緊張してしまうんだけど、聞いている方が今楽しんでいるのかとか、長引いているなと思っているとか、どういう表情をしているかを見る側に立つといいとアドバイスを受けました。小池さんの場合、誰かから教わったとかではなく自分で工夫しているんですか?

コンサートのやり方に関しては教えてもらったことはないと思います。毎回一緒にやっているメンバーと、どうやったらお客さんが喜んでくれるだろうとか考えながら選曲をしてプログラムを組んでいるんです。ここは楽しむ所、ここは聞いてもらう所っていうイメージをしながら作っています。それで実際演奏をするときに、お客さんがどんな表情をしているかなって顔を見たりして。失敗することもあるんですけどね。こんな流れと思っていたけど狙い通りにはならず、今回この曲あんまり響かなかったねとか、この曲はよかったねとか毎回振り返りをして、反応のいい曲をストックしています。