教科書のない取り組み –豊かな最晩年をつくる− 医療法人社団慶成会 青梅慶友病院 理事長 大塚太郎先生【後編】

超高齢化や人口減少にどう対応するか国も答えを持っていないですよね。

国が用意してくれる仕組みでは受けられないサービスを自分たちの手で作るというのはもともとの創業時からの発想でもあります。この病院の始まりは、創業者が創業当時の世の中の老人病院の悲惨な状況を見て、こんなんじゃ自分の親を預ける場所として忍びない、だったら自分の親だけでも安心して預けられるところを自分の手でつくろうと思い立ったことがきっかけです。つまり、自分にとっての親や自分の大切な人の親の最後を過ごしてもらうのに理想的なところをつくろうという、経営者の個人的な想いと理想を形にして出来上がってきたのがこの慶友病院です。社会にとっていいことをやろうということを全面に押し出して展開してきたわけではありません。自分が思い描く世界を作り、それに賛同してくれるお客様・職員がいて、その三者でより良い仕組みを作れないかというトライアンドエラーをずっと回しているような感じです。

私達の患者様のご家族の中には「将来自分が年をとったときには自分も慶友に入りたい」とおっしゃってくださる方も大勢いらっしゃるのですが、歳を取って自分の意思を明確に伝えられなくなってしまったときに、子どもが本当に慶友病院に自分を入れてくれる確約がないことも今の課題です。あらかじめ意向を伝えていたとしても、実際にその時期になるとそれが実行される確証はありません。このような課題を解決するために、自分の最期を自分で決めておくための仕組み作りを我々でできないかということも、研究しているところです。「最後は慶友」という安心の為の仕組みです。

大塚太郎 Taro Otsuka

医療法人社団慶成会青梅慶友病院 理事長
1973年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒、順天堂大学医学部卒
順天堂越谷病院、順天堂高齢者医療センター等勤務を経て2010年4月より現職。
医学博士・精神保健指定医。