今回は、プロコーチにストレングスコーチングの体験談を伺いました。
ストレングス(強み)からくる思考や行動の特徴への対処法を作り上げる
――ストレングスコーチングはどんなものですか?
受けるまでは自分の強みを見て、「こうするといいですよ」と教えてくれるものだと思っていました。
実際は、3分の1が各資質やその組合せによって生まれる思考や行動の特徴を教えてくれるコンサルティング、3分の2は自分の中にある答えを引き出してくれるコーチングでした。
個人的には「私自身のことを一番知っているのは私」という前提があるように感じました。資質からくる思考や行動の特徴への対処方法を、コーチからの提案やサポートを受けながら自分自身で作り上げていく感じです。
――コーチとして様々なコーチングスタイルを知っている中で、なぜストレングスコーチをつけようと思ったのですか?
きっかけはストレングスコーチである森川里美さんのインタビュー記事を読んだことです。
実は以前にストレングスファインダー®︎を受けたことがあり、上位5つの資質を確認して仕事に直接活かせると考えていました。私は上位の資質に「最上志向」と「ポジディブ」が入っているのですが、この組合せから生まれる「いいところを見つけてそれをさらに良くするのが得意」という特徴はコーチという職業に活かされているな、これでいいんだなと思ってました。
しかし森川さんのお話に「資質の扱い方」という言葉が出てきて、資質はとにかく発揮して職業に活かすだけでなく、目標に向かうために調節する必要があるものだと分かりました。
例えば「コミュニケーション」の資質が上位にある人は、何かをコツコツ続けようと思ったら、一人で取り組むのではなく人とのコミュニケーションが発生する形にしておくとその行動を継続することができる一方で、相手の関係性を重視し過ぎて決断を迫ることに躊躇することがあるといったイメージです。
資質を調節する
――具体的にどのように資質を調節する方法を手に入れましたか。
私には「着想」という資質もあるのですが、これは「アイディアを考えるのが大好きで、全く異なる現象に関連性を見出すことができる」という強みです。
実際に自然にアイディアが湧いて来ることはよくあります。どんどんアイディアが湧いて来るというのはディスカッションの際などに役に立つのですが、私は単純に「アイディアを出している」つもりだったところを、聞いている人にとっては私が「やりたいことを話している」ようにも見えるということをストレングスコーチングを通じて知りました。
「着想」をそのまま自由に発揮させると、「あれもやりたい、これもやりたい」と言っているように見られて、場合によっては自分でも思っていない方向に物事が進んでしまいます。それを防ぐために、出てきたアイディアを話すときは「できるかできないかや、やりたいかどうかは別にして、浮かんできたアイディアなんですけどね」と、ワンクッション置くようにするなど伝え方を工夫するようになりました。そうすることで横道にそれてしまうことなく、目標に近づいていけるようになっていると思います。
「目標達成に資質を活かす」と言うと、資質をとにかく発揮させればいいのだろうと考えていましたが、発揮する度合いやその方向性を調節することが重要なのだと気づきました。
資質を飼いならす
――資質をペットのように飼っていて、そのペットににどう対応するか、といった考え方のように聞こえます。
まさにその通りです。ストレングスコーチングのセッションを受けて分かったのが、どんな強みもうまく飼い慣らすのが大事で放し飼いにしてしまってはダメなんだということです。
不思議なのですが、コーチをするときは、クライアントさんが話していることに対してアイディアが湧き出て来るということはないんです。だからきっとどの資質を発揮するか無意識に切り替えができているのだと思います。しかし、多くの場面では資質を放し飼いにしてしまっていると思います。
先ほどの「着想」以外にも、私は上位の資質に「学習欲」があるのですが、それを放し飼いにすると、「あれも勉強したいこれも勉強したい」という気持ちがどんどん起こります。それに「最上志向」が加わって、「せっかく勉強をするなら一流の人から学びたい」となります。でも、興味を持ったものを全部その道の一流の人から学ぼうとすると、時間もお金もかかって大変ですよね。そういうときに、「今学びたいと思っていることは実現したいと思っていることに対して、どのくらい関係があるのか」、「最初から一流の人に学ぶ必要があるのか」などを立ち止まって考え、目標とすることを実現できる方向に向かうよう取捨選択をしていくことが大事だと分かりました。
――コンサルティング以外に、ストレングスコーチングは通常のコーチングと何が違いますか。
スタート地点にストレングス(強み)という分かりやすい題材があって「あなたはこんな資質を持っていますよ」と示されることです。ストレングスファインダー®のWebサイトで177つの質問に答え、自分が強みとしてどのような資質を持っているかという結果を見て、自分にはこんな資質があるらしい、各資質にはこんな特徴がある、一般的にはこういう活かし方をしている、ということが明確に分かっている。自分の取扱説明書のようなものが最初に渡されて、それにマーカーを引き、書き込みをしていく感じです。より早く、自分の思っている自分と、他人が思っている自分のギャップに気づくこともできます。
自分の取扱説明書で無駄を省く
――自分の取扱説明書があると仕事の上で何に最も役立つでしょうか。
強みを放し飼いにするとそこに必要以上に時間とエネルギーが使われてしまいます。それをコントロールすれば無駄に使うことを減らすことができるというのが気づいたことです。
苦手なことはそもそもあまりやらないようにしているのですが、強みとして資質があり、苦がなくいくらでもできてしまうものも、場合によってはそこにエネルギーの無駄遣いをしてしまっていることになります。それをコントロールすれば本来やりたいことに早く近づくことができるし、周囲の人に必要以上に手間をかけさせたり誤解をさせたりしてしまうことも減らすことができると思います。
――ストレングスコーチングは特にどんな人におすすめですか?
経営者など周囲への影響力が大きい立場にいる人や人材育成に関わる人は様々な角度から活用ができると思います。
経営者は自分が思っている以上にちょっとした言動が周囲に大きな影響を与えてしまうことが多くあります。そのため上位の資質を「放し飼い」にしたとき、自分だけでなく周囲の人や、場合によっては会社全体に時間やエネルギーの無駄遣いを発生させている可能性があります。
ストレングスコーチングによって自己認識を高めることで、自分の影響力を組織にとってより良い方向に働かせることにつながると思います。また、私たちは上位の資質にあることは楽に当たり前のようにできてしまうので「みんな同じようにできる」と思いがちです。それが実は他の人にとっては当たり前ではないということを知ることで、個人の資質にあった仕事を割り振るよう意識したり自分の仕事を進めるために有効な資質を持つ人にアプローチして助けを求めるなどということができると思います。