賢いコーチ活用術 –良いコーチの条件・選び方のコツ–

現在、世界には7万人以上のコーチがいると言われています。日本でも1997年以来、コーチの数は増え続けています。「何を基準に選ぶ?コーチングサービスの違いについて」では、個人・法人所属コーチのメリット・デメリットをご紹介しました。自分に合った良いコーチを選ぶためのコツ、コーチの活用方法をご紹介します。

1.良いコーチとは?

コーチの役割はクライアントが自発的に目標を達成するために意識や行動が変容していく支援をすることです。ティーチャーのように特定の知識や技術を教えることでも、コンサルタントのようにクライアントの代わりに解決策を提示することでもありません。すなわち、コーチは年齢や性別、コーチング以外の専門知識の有無に関わらず、クライアントに効果的なコーチングをすることが可能です。実際に、「伝説の経営者」と呼ばれていたGEのCEOジャック・ウェルチのコーチは27歳の女性でした。良いコーチの条件とは何でしょうか。
コーチングは、コーチとクライアントが双方向のコミュニケーション行うことを通じて、クライアントの気づきや行動を促します。クライアントの気づきを生むために、コーチはクライアントの言語・非言語の情報を観察し、クライアントにフィードバックします。そのため、良いコーチの条件として以下の4点をあげることができます。
A)短い時間でラポールを構築することができる
B)効果的な質問をすることができる
C)多角的な観察をすることができる
D)効果的なフィードバックをすることができる

a)短い時間でラポールを構築することができる

クライアントとコーチの間に築かれる信頼関係のことを「ラポール」と呼びますが、良いコーチはより短い時間でラポールを構築することができます。ラポールを築くためにコーチは、クライアントの話をしっかりと聞く「傾聴」や相槌・適度なアイコンタクトやうなずきをするといったことを行います。それに加えてクライアントが安心して話ができる環境をつくることもラポールの構築につながります。特に対面でコーチングセッションを行う場合、周囲の音などが気にならない環境を用意し、コーチがクライアントに緊張感を与えない位置に座ることなども必要です。良いコーチはクライアントにとの間に交わす言語・非言語のコミュニケーションだけでなく、物理的な環境についても気を配ることができます。

b)効果的な質問をすることができる

クライアントの気づきを促すためにコーチングで多く用いられるのが「質問」です。質問によって、コーチはクライアントがまだ気づいていないことに目を向けさせたり、選択肢を広げた上でより良い意思決定を行ったりすることを支援します。効果的な質問ができることは、良いコーチとして欠かせない要素と言えます。

c)多角的な観察をすることができる

コーチが聞き取るのは、クライアントが発する質問に対する答えだけではありません。コーチはクライアントが話す言葉や物事の関係性からクライアントが持つ思いこみや思考のパターンを見つけます。また、声のトーンや間、表情、目の動きなどから、クライアントの発言と感情の矛盾をつかむ場合もあります。クライアント自身が気づいていない思考のパターンや感情をとらえることで、コーチはさらにクライアントにとって効果的な質問を行うことができます。良いコーチやクライアントの言葉の使い方の特徴や細かい表情の変化にも気づくことができます。

d)効果的なフィードバックを行うことができる

クライアントに対してコーチが気づいたことや感じたことを伝えることを「フィードバック」と呼びます。フィードバックもクライアントが自分自身では気づいていないことに気づくきっかけとなります。コーチングで用いるフィードバックは目標達成に向けてクライアントが現状を理解するために用いるものであり、評価やアドバイスではなく客観的な事実を伝えるものです。良いコーチはクライアントの思考や言動の特徴だけでなく、クライアントが周囲に与えている影響力などを伝えます。