医療界にこそ健康経営を
名古屋第二赤十字病院 名誉院長 石川清先生

健康経営で問われるリーダーの在り方

-健康経営というのは身体的なことだけではなくて、精神的な問題も含むのですね。

そもそも健康というのは、身体的、精神的、社会的に健康であることを意味します。特にいまの医療界ではストレスなどからくる職員の心のケアは大きな問題になっています。世間でも過重労働、時間外労働を解消し、働き方改革を実現することが求められています。当院も例外ではなく、医師や看護師などのこういった問題は喫緊の課題としてあがっています。時間外が多く過重労働と思われる職員には、産業医が面接してストレス状態等をチェックしています。健康経営が重要だと言いながら、身体的な健康増進のことだけ取り組んで、働き方改革などを放っておいたらそれは片手落ちです。健康経営の取り組みは、時間外労働、過重労働などの対策と同時進行で進めていく必要があると思います。

−米国では医師の50%が「自分は燃え尽きていると感じている」と言われ、問題になっているようです。今後日本でも同様の問題が起きていくのでしょうか

病院によるかもしれませんが、特に医師不足に悩んでいる病院や診療科は過重労働になりがちなので注意が必要です。時間外労働やストレスチェックなどを徹底していれば、ストレス状態を把握することができますが、鬱になりかけてから対応していたのでは手遅れです。産業医に頼る前の段階で現場のリーダーが部下の異常に気づかないといけないと思います。現場のリーダーは部下の中にパーフォーマンスやモチベーションが下がっている職員がいるかどうかを察知して対処しないといけません。現場のリーダーの在り方がとても重要だと思います。