外務省の統計によると、日本国外に進出している日系企業の総拠点数は2017年の1年間で約3,700拠点(約5.2%)増加しており、これは統計が開始された2002年以降最多となっています。積極的に海外に進出する企業が増える一方で、海外進出に失敗していると感じている企業は全体の約7割にのぼるという調査結果もあります。
駐在員が会社に期待されたリーダーシップやパフォーマンスを発揮できないと、拠点立ち上げの遅れや現地スタッフとの関係構築失敗などに繋がります。また、駐在員のうつ病発生率は日本国内の3倍とも言われ、精神的なストレスもたらします。それらの結果、任期を全うできずに帰任してしまう駐在の失敗率は全体の1割以上で、地域によっては8割近くにのぼるところもあります。海外での重要なポジションに抜擢された人たちが本来の能力やパフォーマンスを発揮できず、時には健康にまで支障をきたしてしまうのはなぜでしょうか。
今回は海外赴任時に加わるストレスに注目し、海外赴任時のパフォーマンス低下の要因と必要なサポートをご紹介します。
1.海外赴任時は大きなストレスが発生
海外赴任時は日本にいた時とポジションや人間関係、業務内容が変化するだけでなく、生活にも大きな変化が起こります。本人がポジティブに受け止めていても、環境の変化は心身にとってストレスとなります。
「ストレス点数表」(夏目誠・大阪樟蔭女子大学教授ほか研究グループが発表)では、ストレスの要因となる65の項目と各項目のストレス点数が示されています。その中で海外赴任に関係する要因を挙げると以下のようになります。
海外赴任に伴い発生する出来事とストレス点数
ストレス要因 | 点数 |
---|---|
労働条件の大きな変化 | 55 |
抜てきに伴う配置転換 | 51 |
引っ越し | 47 |
食習慣の大きな変化 | 37 |
海外赴任に付随して発生する出来事とストレス点数
ストレス要因 | 点数 |
---|---|
単身赴任 | 60 |
睡眠習慣の大きな変化 | 47 |
仕事に打ち込む | 43 |
社会活動の大きな変化 | 42 |
子どもが新しい学校へ変わる | 41 |
仕事のペース、活動の増加 | 40 |
自分の昇進・昇格 | 40 |
妻(夫)が仕事を辞める | 40 |
自己の習慣の変化 | 38 |
レクリエーションの減少 | 37 |
レクリエーションの増加 | 28 |
収入の増加 | 25 |
このように海外赴任をするというだけでストレス点数の合計点は190点になります。さらに家族が帯同する場合も大きなストレスが加わります。ストレス点数の合計点が高くなるとどうなるのでしょうか?