物語を聴き、ゴールやビジョンを一緒に考える
東北大学大学院医工学研究科 出江紳一教授

ずっとコーチングを続けてきたのはどのようなモチベーションからだったのでしょうか。

研究として知りたいことがあるから続けてきました。そして診療でも使えると思っています。診療の場では権威勾配がありますから、普通のコーチングとは違うと思いますけれども。
しかし何より、コミュニケーションを通じて「気づく」という体験を自分自身がしたことが大きいです。気づきが起こって行動に結びつく。その場の行動というだけではなくてもっと大きなものが見える感じがあります。
学生の頃に人の成長に関わる仕事をしたいという自分自身の核に気づいたのですが、リハビリテーション医学を選んだのもその延長だと思います。これからも、定年後もそれは同じで、ずっと遠くにある星です。東海大学創立者の松前重義先生の言葉で、若い時にしっかり勉強して自分で考える力をつけ、身体を鍛えなさい、の後に「若き日に汝の希望を星につなげよ」と続くのですが、私にとって「星」とはそういうイメージです。

コーチングを知って一番良かったなと思うのは、ゴールやビジョンを一緒に考えるのがとても大事だということです。相手をコミュニケーションで支援したり、コーチをされることで自分自身のゴールやビジョンを見たりすることができるということが分かった。私の口癖は「どうしようかな」なんです。何か起こったときに、問題を解決するためにどうしようかと考える。それはいい習慣だと思うのですが、どうしようかと対処する以前に、「どうしてそれをするのか」、「そもそも自分は何をしたいのか」ということに意識を向けさせてくれるのがゴールやビジョンであり、コーチングだと思うのです。
そういうコミュニケーションを交わす機会が多いほうが、物事が進みやすいと思うんです。診療であればチームで動きやすくなると思うし、教育の場であればクラスで仲良くなるだとか、すごく基本的なコミュニケーションの形になると思います。