長時間労働を防ぐための規制
OECD加盟国の中でも特に労働時間の短いドイツですが、労働時間に関して労働時間法方という法律と産業別の労働協約で厳しく規制がされています。長時間労働を減らすことにつながる代表的な規制や取り組みとして以下の4つが挙げられます。
- 労働時間に関する規制
- 労働時間貯蓄制度
- 長時間労働に対する罰則
- 有給休暇制度
1. 労働時間に関する規制
1日当たりの労働時間は8時間と定められ、最長でも10時間を超えてはならないとされています。また、1日の勤務時間が10時間を超えたとしても、6ヶ月間の1日あたりの平均労働時間が8時間を超えてはいけません。勤務を終えてから次の勤務を始めるまでの間に11時間以上時間を空けなければならないという定めもあるため、「終電で帰って始発で来る」というような働き方はできない前提になっています。
2. 労働時間貯蓄制度
実際に働いた時間と職場で定められた労働時間の差を積み立て、有給休暇に振り替えることができるのが「労働時間貯蓄制度」です。積み立てた労働時間は長期休暇や育児・介護・資格取得のための休暇などに使うことができます。積み立てられる時間数の上限や休暇に振り替えられる清算期間は雇用契約の内容によって異なりますが、従業員250人以上の企業の80%に普及しています。 「残業をした分は休暇に振り替えることができる」という意識が浸透しており、振替休暇を取ることにも後ろめたさを感じる必要はありません。
3. 長時間労働に対する罰則
労働時間に関して労働監督局が監視を行っており、抜き打ちで検査が行われることもあります。労働時間法に違反場合していた場合、最高1万5000ユーロの罰金が課せられますが、これは長時間残業をさせていた部署の管理職が支払うことになります。また、長時間労働がメディアに報じられると企業イメージが下がり良い人材が集まらなくなってしまいます。経営側・組合側ともに長時間労働は企業にとってマイナスという意識が共通しています。
4. 有給休暇
ドイツの法律で定められた有給付与日数は年間24日ですが、多くの会社はが30日の有給休暇を付与しています。企業は有給を翌年に繰越すことを認めなくても良いという法律があるため、ほとんどの従業員はその年のうちに有給を使い切り、有給取得率はほぼ100%です。ドイツの祝日は年間10日前後(地域によって違いあり)で、年間15日の祝日がある日本よりも祝日の日数は少なく、また、祝日が土日にあたる場合も他の曜日に振り返られる制度はありませんが、有給を確実に使うことによって年間145日以上の休みを実現できています。また、病欠は医師の診断書があれば有給休暇日数から差し引かれない、12歳以下の子供が病気になったとき年間で1人につき10日(夫婦で合計20日、母子家庭および父子家庭も年間20日)欠勤することができるという決まりもあり、欠勤中も給与が支払われます。