【コーチング導入事例】複十字病院 人材育成プロジェクト「お互いの「顔」が見え、繋がっていることを実感できる組織にしたい」事務部長 菊地 とおる様

管理職が何でもやってしまう習慣を変える

トレーニング参加者の人選にあたっては、今のリーダー、つまり管理職ではなくて課長の一歩手前の人を選びました。管理職の研修はちょこちょこありますし、法人で研修を企画するときは大体管理職がまずは対象になるんですよね。何かにつけて「管理職」になるんです、自分も含めて。
今日もある師長と話していたんですが、当院には管理職が諸々のこともやってしまう傾向があるんですよ。自分でもそれを反省していたんですが、師長も同じことを思っていたようです。スタッフが失敗したときのリカバリーは全て師長がしている。管理職が責任を取るのはもちろんです。でも、「失敗しちゃったのね、じゃあ私がやるわ」、と言って全部を管理職が引き受けてしまうのはおかしくないか、と。そんな習慣が身についているところが当院には結構あるのではないかと。プレーの責任はプレーヤーが取っても良いし、そこまで管理職が巻き取ってしまうとスタッフが主体的にならないのではないかと思いました。
ですから、次の世代に主体的になって欲しいと考えています。次は自分たちの時代だと思って動いてくれないと、病院の先がないかなと。
人選にあたっては、私も何人か選びましたし、各部の責任者に選んでもらうこともしました。「こういう背景で、こういった狙いのトレーニングなので、一人出して欲しい。できれば課長代理クラスで」と伝えました。各責任者が期待感を持つメンバーを選んでくれたと思っています。
今回は20人がトレーニングを受けたことになります。常勤職員が300名いる中で、20人がこれから職場で実践をしていくわけなので、その20人に協力できる仲間をさらに増やしていきたいと思うんですよね。その結果として、「こうしたい」、「ああしたい」という発想ができて、自分から行動に移せるようになって欲しい。今は「上から言われて」ということがどうしても多いですし、管理職たちも良い意味で「私がなんとかする」という場合が多いんです。そうではなく、次の世代の人たちが自分で行動して自分から変わって、周りを変えられると良いと思います。コミュニケーション・トレーニングを通じて、患者さんを含めた自分と周りのコミュニケーションを良くできるように変わっていってくれるんじゃないかと期待しています。
残念ながら患者さんから「対応が事務的だ、冷たい」とお叱りを受けることがあります。でも1:1で話すと、皆良い人たちなんですよね。普段話すときと現場で見せる顔は別、仕事が忙しいから気持ちの余裕がない、ということはあると思いますけど、忙しいから不機嫌でいいという話はありません。そういうところも変わっていければいいなと思います。
病院は全部一体ですからね、医師も含めて。線が切れることはなく、全部繋がっています。医師、看護師、薬剤師、放射線技師、検査技師、管理栄養士、診療情報管理士、事務などあらゆるスタッフがやること・・・病院の業務は全て切れ目なく繋がっているんだということを意識してくれると尚良いなと思いますね。
それができれば、スムーズな意思疎通ができ、連携が取れて、最終的には患者さんにメリットが行くと思うんです。今までも繋がってはいたんでしょうけど、顔が見えずに繋がっている部分もあったかもしれません。でも今はトレーニングを通じて、「あの仕事をやっているあの人が、こう思っているんだ」というのがわかるじゃないですか。お互いの顔が見えるようになって、繋がっていることが実感できているのではないでしょうか。そうなれば、お互いにもっと協力もしていけると思います。

菊地 とおる(Toru Kikuchi)
複十字病院 事務部長
https://www.fukujuji.org/
※役職は取材当時のものです。