想いを紡ぐであい
2024年1月1日に医療従事者向け人材紹介事業サービスを立ち上げた株式会社Superiieur 曽我香織さんに、新規事業”myPeconキャリア”について伺いました
―曽我さんと医療業界のとの出合いについて、まずは教えてください
前職のコーチング企業では、第二新卒くらいの社員を採用した前例がないということで秘書をしていたのですが、これがまぁ向いていなくて。我ながら出来の悪い秘書だったと思います。それを上司である役員に話したところ、秘書を続けるか、役員が管轄している医療業界の営業をするかの二択だと言われて、消去法で営業に転身しました。はじまりは、実はそこなんです。
当時、名古屋第二赤十字病院の院長をされていた石川清先生が、職員のやりがい・満足と患者満足の両方を目指す病院経営について記事を書かれていて、「これが私のやりたいことだ!」と思いすぐにアポイントを取って。そこから、日本初の全病院的なコーチング導入のプロジェクトが始まりました。色々な医療従事者の方々とお話しする中で、自分はなんて井の中の蛙だったのだろうと思いましたね。患者さんに良い医療を提供するために昼夜惜しんで働き、コーチングセッションには息を切らしながら参加。コーチングを学ぶクラス中も容赦なく院内ピッチが鳴って、患者さんの容態について真剣に討議。休みの日も電話が来れば病院にかけつける。土日は学会に行って勉強しているのに、地方に行く「楽しみの一つ」と捉えてすらいる・・・。
こんな姿を見て、医療従事者ほど使命感と利他の精神をもって命を削って働いている方々もいないなと思い、心打たれました。そういった熱量の方々と出会う分だけ、私の中でもやりたいことがどんどんと沸き出てきました。職員満足と患者満足に取り組む病院やそこで働く医療従事者に出会えたことでわたし自身が触発され、医療機関との仕事に周りも驚くくらいのめりこんでいったんです。
―非営利法人のPX研究会はなぜ設立されたのでしょうか
当時、日本の病院には職員満足や患者満足度に取り組む病院の事例が少なかったので、アメリカの病院を調べていた時にアメリカの高名な病院がPXに注力していることを知りました。そのことを現PX研究会理事の安藤先生に何気なく話してみたら、「これは今後の日本の医療に必要なことだから、曽我さんやってみよう!」と背中を押してもらう形になって。PXは日本語の文献もほぼなかったので、資料を翻訳して読み合わせることからはじめました。まだ珍しい概念だったので、メディアなどもよく取り上げてくださり、「記事を見た」などといって全国の医療機関から志ある医療従事者が集まるコミュニティとなりました。そして、気が付いたら桃太郎のように仲間ができてきたんです(笑)。
理事の安藤先生と出江先生には本当に本当にお世話になっています。足を向けて寝られません。
―今の医療業界の課題を曽我さんはどう捉えていますか
人手不足も深刻な課題と思いますが、あえて一言で言うならば、「ビクティム」かなと。ビクティムは直訳すると「被害者」で、他者や外部環境など自分以外に原因を求める他責思考のことです。「経営幹部が言ったから」、「○○さんはこうだから」などと自分以外に責任を求めるのもそうですし、病院経営も「国が診療報酬を決めるから」として、診療報酬に該当しないものは取り組まない。自院がどうなりたいかはあまりなく、新しいことをやるよりは保守的で、現状維持を好む。「やる」理由よりも、「やらない」理由を探す。
このような考え方が蔓延している病院の風土は、暗く、諦め感があり、活発なコミュニケーションがありません。
そのような病院に行きたいですか?そのような病院で働きたいですか?
医療は職員なしに成立しないものですから、職員のマインドは最重要です。職員の質が、医療の質や患者対応の質に直結します。ところが、職員のマインドや質に投資したところで病院の売上には1円もつながりません。
その背景には、個々の医療機関ではどうしようもない医療制度にまつわる問題もありますが、それを理由にして取り組まなければ、患者にも職員にも選ばれません。そこで、医療制度にも反映が出来たらと思っているわけですが。
―そういった状況の中でmyPeconキャリアが目指す姿を教えてください
myPeconキャリアが介在することで、日本の医療の質向上に貢献したい。
そのためには人材紹介だけでなく、病院に対して多職種連携のためのコミュニケーショントレーニングやコーチング、一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会で取り組んでいるPXの知見提供を行ったり、あるいは応募者側の医療従事者にコミュニケーショントレーニングを提供する・・・など、弊社リソースを活用した育成も絡んできますので、これはもう、本当に壮大な計画なんです(笑)。
我々が関わることで、医療従事者がやりがいや自分の成長を感じ、医療機関も質の良い職員と共に医療の質改善に取り組めるようになれば最高です。
そのためにまずは、医療の質を高めるべく、PXやコーチング、コミュニケーションを重視している病院と出会うこと。これから強化していきたい病院ももちろん歓迎です。
そして、日本の医療の質向上や、PX、チーム医療に関心のある医療従事者の方にお会いすること。そういった志ある病院と医療従事者のハブとなって、つなげていく。それが結果として…誰でも安心して通えて、家族や大切な人を心配なく預けることのできる病院が日本に増えたらいいなと思っています。
―その先に見据えるものって何でしょうか
やはり、PXをはじめとして患者中心の医療に取り組む病院、コーチングをはじめとして職員間のコミュニケーションを大切にする病院にスポットライトがあたり、それが診療報酬や認定に繋がることではないでしょうか。一つひとつの病院の医療の質が高まることで、結果的に海外からも注目される病院が増えたら最高ですよね。
―最後に何かあれば
myPeconキャリアを運営するスーペリアは、「見えない労働人口減の解決」をミッションとする会社ですが、見えない労働人口減には、患者中心の医療を提供するためにチーム医療を実現したいという志や熱量はあるのに、今いる病院で力を発揮できない人も含まれている点が重要です。患者、職員のために尽くす「GIVER」が報われる世界であってほしいというのは、私の根源にある願いです。新規事業の立ち上げには、もちろん周囲からの反対もありました(笑)が。今回も爆速で開始しました。志ある「GIVER」な医療従事者が報われる病院を探したいし、病院が抱える問題解決も支援したいです。
人材紹介は一つの手段でしかなくて、志ある医療従事者の自己実現、人生に伴走していきたいですね。企業としても信頼される存在であり続けたいとっています。
曽我香織
大学卒業後、アクセンチュア株式会社で人事業務改善のコンサルティング、人事給与計算システム統合プロジェクトにおけるベンダーマネジメント等を担当。2009年より株式会社コーチ・エィに在籍し、ビジネスコーチ及び法人営業マネジャーとして従事。2015年9月に株式会社スーペリアを設立し、現在に至る。2024年1月1日には新規事業として医療従事者向け転職支援サービスmyPeconキャリアを立ち上げた。