人事の心得~わたしの生き方~Vol.01 その情熱が、燈るとき(木村有希さん)

その情熱が、燈るとき

 

周囲への尊敬と感謝を忘れず、どんな状況をも前向きに突破していく無限のパワーを秘めた
木村さんとの30分。

―本日は、インタビューを受けていただきありがとうございます。早速ですが、座右の銘を教えてください

色々考えたのですが…やはり「明るく楽しく前向きに」ですかね。
人生においても、キャリアへの向き合い方についても、チームビルディングに関してもその想いを大切にしています。

―現在の業務内容を簡単にお教えください

今は、人事部の人材育成チームのチームリーダーに従事しています。女性活躍推進はじめIT人材の育成や新入社員研修や、管理職向け研修などの実施を担当しています。

―今の仕事の醍醐味や、やりがいを教えてください

人事部の醍醐味と言えばやはり、人がもつ潜在的な可能性とその動機の源に繋がる目的を持った時、想像をはるかに超える能力の最大化が見えることですね。その瞬間に立ち会え、自分が育成担当として関われることがやりがいであり、醍醐味です。

自分の強みと、天職とのであい

―木村さんは経営企画部から人事部へ異動されていらっしゃいますが、異動を聞かれたときはどんなお気持ちでしたか

経営企画部の仕事は自分自身でも天職だと思っていましたし、周囲からも向いていると言われていたので正直異動は不安でしたね。経営企画部では経営陣と現場を繋ぐことに楽しさというか、組織単位で変えていくプロセスに自分の強みを生かせていたんですよね。

―木村さんの強み、是非教えてください

一つは行動力ですね。どんな壁があっても突破していきます。もう一つは企画力です。今までにない新しいことを施策してくことにプラスして、魅せ方などの伝え方、訴求力にもこだわりがあります。コーポレート部門は社内に対していろいろなプロモーションをかけていきますが、そのデザインにも凝っていました。
わたしが経営企画部に在籍した時期は、ちょうど今の中期経営計画を立ち上げようとしていた時期でした。いかにして社員に浸透させるのかという発表の時から様々な展開、表彰まで仕掛けていくのが楽しかったですね。

―お話されている表情もとても楽しそうで、その頃の木村さんのワクワクされていた気持ちが伝わってくるのですが、これまでのキャリアの中で嬉しかったことは何ですか

経営企画部の頃は、自分の仕掛けた施策が社員に浸透し大きなムーブメントが起きているところを目の当たりにした時は嬉しかったですし、今は育成担当として成長の瞬間が見えた時は本当に幸せです。なかなか難しいなと思って頭を悩ませていたメンバーが自発的に想像を超えた成長に出会えた時は、心が震えるような感覚になります。

―人事部にいらっしゃると、若手や中堅そして上層部の方も含めていろいろな方の成長の瞬間に出会われるかと思うのですが、印象的な場面などはありますか

例えば、新人だと学生気分が抜けない頼りなさが半年間の研修を経ると主体的になっていきます。中堅もトントンと成長できる人もいれば悩んで足踏みしてしまう人もいるんですよね。そういうメンバーと、「ここがいい所だよね!だからこう生かしていこう」などと対話しながら見つけて、本人が「自分はこれを武器にして戦っていけるんだ!」て前を向きだした瞬間に立ち会えるのはすごく嬉しい。管理職って成長しないように見られがちですが、研修に参加することで「これまでの固定概念みたいなものを取っ払って自分自身も変わっていかないといけないかもしれない」、なんていう話を聞くと研修企画をしてよかったなと思いますね。正しいことを正しく伝えるだけでは面白みはなくて、試行錯誤してもなかなかうまくいかず悩んでいるところに一緒に入り込む研修が有効ですよね。そういう研修を作るようにしています。それって机上では完成しなくて、普段のコミュニケーションの中に「これかも!」というヒントがありますね。
あの頃の自分もこんなことで悩んでいたよな、こんな風に言ってもらえたらもしかしたらキャリアが違ったかもしれないという自分自身の経験もベースになっていますね。

想いが伝われば変わる、と信じている

―お話を聞いていると木村さんは姉御肌なのかな、なんて思ってしまったのですが社員の方とはよくお話されるのでしょうか

そうですね。新人含む若手や部長クラスとも、役員の方とも積極的にコミュニケーションとりますね。しょっちゅういろんな方と立ち話をしたり、チャットをしてます。色んなレイヤーの方が本心をぶつけてくださることは本当にありがたいです。例えば女性活躍推進でも研修の主体はその参加メンバーとその上司ですが、必ずその上長とも話をしてこんな風に育てていきたいですとか次はどんなメンバーが控えていますか等も話しながら、研修の中での変化も簡単にお話したりすると、上長の方もふとした時に関わってくださるようになるんですよね。

―木村さんは人を育てるということに想いがあるなと感じたのですが、きっと様々なご経験をされての今だと思います。正直、あの頃は辛かったなという時はありますか

辛かった時はありません。でも腐ってた時ならありますよ(笑)。
やりがいを感じていない期間ですかね。今思えば産育休復帰後は、自らマミートラックに乗っていたというか責任のある仕事を避けていたし、その時のわたしの口癖は「できません」「やりません」(ここでインタビュアー大絶句)でした。今この話を後輩たちにすると「信じられない」と言われます(笑)。人生の楽しみは仕事以外にあればいいと思って働いていたので、その頃の本部長から「あまり楽しそうに働いていないから異動した方がいいのではないか」という話が出て、経営企画部に移ったと後から聞きました。経営企画部も全く自分に合うとは思っていなかったのですが、気づいていなかった自分の強みをとにかく褒めてくれたことが結果、自分の強みを知るきっかけになりました。自分で自分の強みはなんだろうと悩むよりも、周囲が見つけてくれた強みの方がキラキラして見えて、それをたくさん集めていくところから、また仕事って楽しいなって改めてこの会社をよくしたいなってリスタートした感じですね。

 

 

―産休育休からの復帰は勇気が必要ではありませんでしたか

弊社はとにかく人がいいので、働きやすいです。産育休も当たり前のようにとって復帰してきます。でも、産休中はママ友と一緒にいたりする中で「わたし専業主婦でもいいかも、辞めようかな」とも考えていたんです。その時に上司と面談したのですが、辞めるのはいつでもできるからとりあえず復帰してやってみて、違うなって思ってから決めたらいいんじゃないと言われました。ちなみに、主人からは絶対に辞めるなと言われていました(笑)子どもにとってもわたしにとっても外の世界とつながっている方がいいっていう意味だったのですがね。あとは、ソーシャルプレッシャーもあったかなと思います。わたしの母は専業主婦ですし、親戚も従妹もそうなんです。だから「保育園に預けるの?」と。三歳まで子どもと一緒にいないことは悪いこと、みたいな。自分の意思と周りのからの影響で自分自身も何をしたいのかもよくわからなくなっていましたが、復職した日に「おかえりなさい」って後輩が言ってくれた時に「あぁ、わたしここにも居場所あったんだな」って思えて。先輩ママからのアドバイスも迷いや雑音をなくすきっかけになりましたね。あとは、好きな時にトイレに行けて、温かいものが温かいときに飲めるとか、大人と会話できるみたいな単純な幸せみたいなものがあって、復帰してよかったなとわたし自身は思っています。
もちろん、専業主婦も立派な選択だと思います。どちらがいい悪いではなくて、本人の意思ですし子どもを預けて働くということが決して悪いことではないということは意識して後輩たちにも伝えてはいます。わたし以外でも自分が経験したことをこんな風に捉えればいいんだよと言葉にして伝えてくれる社員が多い所も弊社の良い所ですね。

―仕事とプライベートの均衡はどうですか

経営企画部で働き出して仕事が楽しくなってきた頃、キャリアに力を入れたいと感じ主人やわたしの母にサポートして欲しいというお願いをしました。周囲の協力もあって今は仕事に振り切っていますね。育成に関してやりたいこと・叶えたいことが日々生まれるので、仕事が趣味なところがあるんです(笑)。もちろん月一休暇は自分の時間の為に友人に会ったり、買い物したり、展覧会をのぞいたりしますが。

―お子さんは木村さんのお仕事に何か言われたりしますか

仕事が経営企画部だったり人事だったりするので、仕事内容の説明はしやすいです。
例えば、明日は研修なんだけど…なんていう話もします。「お互いの強みを探す研修なんだけど、いい所言い合ってみる?」なんていうと当時小学校1年生の息子が「ママのいい所は、会社に楽しそうに行っているところだよ」って言ったんです。その時はハッとしました。
自分がキャリアを変えようと思ったことで息子にさみしい想いもさせるかもしれないけれど、わたしが人生を楽しんで生きていれば背中で語るじゃないですけれど、仕事って楽しいんだと思ってくれるのは嬉しいなと。どこか、母親としての罪悪感みたいなものがあった中でのその言葉は本当に嬉しかったですね。
今は10歳になり、リーダーシップについて話したり「なんでママそんなに仕事に夢中なの?」なんて聞いてきますよ。
昔、子育てに悩んでいた時に「子どもは言ったように育つんじゃなくて、やったように育つ」という言葉を聞きハッとしました。こうしなさいって口で言っても、母親がそれをしていなかったら子どもはしない。自由に楽しく生きている姿を背中で見せれば子どもはそういうふうに捉えて生きていくと思うんです。だから、私もそうやって見せようと思って、今、見せています(笑)。

悪いところもわたしだし、いいところを伸ばせばいい

―木村さんの生き様が会社の方もご家族も含め周囲の方に大きな影響を与えているなと感じるのですが、今後の夢やビジョンはありますか

そうですね…。D&Iに関わっているのであらゆる人が自分らしく生きることのできる社会を創っていきたいという想いがあります。定年後もより良い社会に向けた何かには関わっていたいです。それがNPO法人なのか、何かはわからないのですが。
上司は見抜いていたのですね、きっと。わたしが「人」が好きだということを。
手の上で転がされているんです(笑)

―今年の目標があれば是非教えてください

引き寄せの法則を信じていて、やりたいことや会いたい人がいたら口に出すようにしています。そこからどんどん自分の世界や影響の範囲が広がっていった嬉しいな、と。
育成のプロって、専門性の証明がとても難しいんですよね。だからこそ「木村は育成のプロだね」と社内外で認められるようになりたいです。

IT賞 (サステナビリティ領域)の受賞記念講演をされる木村さん。

東京海上日動システムズ
人事部 人材育成チーム 課長代理
木村有希(きむらゆうき)
2000年新卒入社。ヘルプデスク業務やセキュリティ、アウトソーシング管理などに携わ る。出産と育児休暇を経て2014年に復職。経営企画部を経て、現在は人材育成 とD&Iを担う人事部・人材育成チームのチームリーダーに従事しながら東京海上グ ループのD&Iコミュニティメンバーとして活動範囲を広げている。