置かれる状況は自力で変える~コーチングによる変化と成果~

今回は、オンライン・コーチングmyPeconのユーザーでベトナム駐在中の榎本政剛さんに、海外駐在をされたきっかけや現地での経験や葛藤からコーチをつけた理由・成果についてインタビューさせていただきました。

 

―榎本さんが海外駐在をされた背景を教えてください。
約5年前に現職の商業デベロッパーに転職し、日本のモールに勤務して3年が経過した頃、無難に仕事をこなすようになっていた自分を客観視して、現状のままでは成長が鈍化してしまうのではないかと危機感を抱きました。ちょうどその頃に海外駐在の社内公募があり、迷わず手挙げしたというのが経緯です。大手企業でも、海外の子会社の運営ではベンチャーに似た挑戦的な部分が多くあり、現地でゼロから仕組みづくりや人間関係の構築を行い、都度現場に足を運びながら顧客目線で仕事して実績を積み上げていく必要があります。そういった環境に身を置くことで、強制的にでも自身を成長させたいと思いました。

 

実際にベトナムへ赴任してみると、想像以上に不自由なことが多くなりました。自分で運転して気ままな移動はできなくなり、赴任当初は言葉の壁もあり周りに知り合いがいるわけではないので、職場の日本人だけのコミュニケーションが多くなりました。やる気をもって赴任してきた分、革新的なことに取り組もうとする想いが先走ってしまい、人間関係を円滑にしたいと思いながらも意見が直ぐには通らないことが多くなり、自ら一人でいることが増える状態を経験しました。結果を残さなければ自身の存在価値が問われるという見えないプレッシャーがある一方、社内の人間関係を崩したくないという不安を常に持つような生活となりました。日本にいたら大学時代の旧友や前職の同僚等に声をかけて飲みに行き気分転換することもできたと思いますが、海外ではなかなかプライベートな友人が居ない為息抜きの場が少なく、周りに相談できる人もあまりいませんでした。

 

この状態が数カ月続き、現実から逃げ出したいという思いもよぎりましたが、もしこの辛い期間を切り抜けることができれば将来きっと良い思い出になり、自分の基礎、糧になるだろうと思い直しました。ベトナムでの経験を、「逃げ」の思い出にしたくなかったんです。自分が置かれている状況に文句を言っても何も変わらないし、全員に好かれようと思っても無理な話ですよね。変えられるのは自分だけですから。自力で現状を打開するため、藁にもすがる思いでコーチを付けました。

 

コーチングのことは元々本を読んで知っていました。私は「迷ったらやる」というタイプで、失敗したらネタにすれば良いではないかと軽い気持ちでまずは試すことにしました。

 

最初はカウンセリングのようなイメージかと思っていたのですが、実際のコーチングは自分の状況を話しているうちに、自分の中から答えが引き出されて頭が整理されていくような時間でした。海外の子会社では「安心・安全なモールを作る」「資産価値を向上させる」という抽象度の高いミッションを自分たちで咀嚼して仕事を創っていく必要があります。ミッションについてコーチに話して自分の考えを引き出していただいている中で、「こういうモールを作りたい」という自分なりのビジョンや理想が描けるようになり、そこから逆算してやるべきことが明確になっていきました。

 

また、これまで自身で良かれと思って行っていた私の提案に対して説明不足により現場の誤解を招く事が多かった経験から、「何もわかってもらえない」と考えていましたが、コーチングの中で提案を受ける人の気持ちを考えたり、提案する目的を再考したりすることで、自分の考えに固執し過ぎていたことに気づきました。何かしなくてはという思いから、自身の中にある、あるべき論を振りかざしてしまっていたんです。自身の考える正論だからといってすぐに採用されるわけではないですし、常に正しいとも限りませんよね。そこで初めて、相手を責めるのではなく自分のコミュニケーションを変えるべきだと思うようになりました。自分の置かれている環境に対する見方や、視点が切り変わったんです。


―ご自分のアプローチを変えることに抵抗感はなかったのでしょうか?

もちろん、自身を変えることに抵抗があったのも事実です。現状維持をよしとして変わろうとしない相手を前に、正しいのは自分で、間違っているのは相手なのにと思ったことも正直ありました。

 

そんな時は、コーチングでヒントを得て作成したメモを見返すようにしました。海外赴任した当初に自分が何をしたかったのかを書き綴ったメモです。これをパソコンの目のつく場所に置いて、毎日仕事始めと終わりに見返すことで自分の原点をリマインドするんです。メモを見ることで、今は目的のために我慢しよう、時にはしっかり伝える必要があると思い直すことができました。この習慣によって、自分の中で軸となる理念が定まったように感じています。

 

自分の理念ができると、面白いことに会社の理念も腹落ちして深く理解できるようになるんですよね。これまで企業理念は額縁に飾られている遠い存在に思えていたのですが、理念を解釈して会社が何をしたいのかを想像できるようになったんです。「コストがかかるから」などの目先の考えがなくなり、誰の視点で仕事すべきかが明確になりました。

 

コーチングを受けたことで自己理解が深まるだけでなく他者・会社の視点でモノを見ることができるようになり、目的地に最短で到達するための思考ができるようになります。私の場合は自分の捉え方・考え方が変わったことで、目的に適った思考をするようになり、集中力も上がりました。ビジョン・ミッションからやるべきタスクをシンプルに整理するようになったことで業務効率が上がり、残業も減って、自身のパフォーマンスが上がったと思います。他人の意見も批判と捉えずに、貴重な意見をもらえたという意識に変わり、生産的に活用できるようにもなりました。

 

―海外赴任者や赴任を希望されている方へのアドバイスや榎本さんの今後の展望を教えてください。
海外に出ることで自分の世界が広がると思いきや、私が経験したように、結果を出さないといけないと言う不安から逆に世界が狭くなり窮屈に感じられることもあります。ですが、自分の考え方や捉え方、行動ひとつで世界が広くなり、そこでしかできない経験をできる可能性も同時に秘めていると思います。自分次第で世界は狭くも広くもなるということです。

 

今後は、日本に帰任した際は社内の若手教育をしたいと考えています。教育といってもロジカルシンキングなどのテクニカルスキルではなく、企業理念の解釈などを通してどんな視点で仕事をすべきか、何をお客さまに提供すべきかといったスタンスや捉え方の教育を考えています。今回、私自身が海外赴任したことで得られた「自分で仕事を創る」という考え方や顧客・会社視点を若手社員に還元できたら、より早期に成長でき、強い会社になっていくと思います。

その結果として、学生や社会人にとって「就職したい企業」になったり、転職した人が転職先で市場価値の高い人材として認知され社会で活躍できるようになったりすれば、私にとって何よりのやり甲斐だと思います。

 

 

榎本 政剛
大学卒業後、人材会社に入社。コールセンターの運営、コールセンターに特化した子会社の立ち上げを経験後、お客さまの顔が直に見える仕事を希望しコンビニのSVへ転職。
オーナーと共に店舗作りをすること、お客さまの反応が直に感じられる事にやりがいを感じつつ、立地により売上が決まる不条理を強く感じ、街づくり、地域社会への影響を与えることができる商業施設に興味を持ち、現在の商業デベロッパーへ転職。現在に至る。

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