もっと頑張りたい、カウンセリングでもない、雑談でもない、グチでもない時の伴走者
僕は独立して何をしたかったかというと、自分が思い描くような医療を展開できる組織、チームを作りたかった。でも身近に示してくれるような組織はないし、あまりそういう「はぐれ医師」も周りにいなくて。前例がなく周りからも肯定的には言われなかったですね。一般的には組織の中で耐えてこその医者・実力であるという価値観があり、でも自分の中ではこのままではどこに行っても同じことだなと。
僕にとって独立は大きい決断ではなくて、そうなるべくしてなったのですが、実際一人になってみると不安というか。今までは良くも悪くも「こっちに行きましょう」という方向性が示されてきたので、一人で走り抜けることができるのかが不安でした。それで相談できる人が欲しかったんです。しかも利害関係がない方。大学に残っている人に相談したらやはり「戻ってこい」になるし、楽したくてフリーになっている人は「気楽にやればいいんじゃない」という話になるし。僕は方向を変えたいわけではないんだと(笑)。あまりに医療のことなどを知らない人だと今度は訳がわからない。ただ「大変だね」で終わっちゃう(笑)。
心病んだわけではないからカウンセリングでもない、雑談でもない、グチでもない、これって誰が伴走してくれるのか?利害のないプロが本当に欲しかったですね。今振り返るとそれがコーチだったわけですが、全然知らなかったです。
少し自分でアクセルを踏めば進めるというような車のアイドリング状態のようになった感じ
-実際にコーチをつけてみて、どのような感想を持ちましたか。
コーチって、とりあえず目標決めましょう、2週間後までにここまで達成できるようにしましょうというイメージだったんです。
コーチに「これから2週間後、どう臨めばいいですか」と最初のセッションで聞いたことがあります。「目標を立てるというよりは、とりあえずそのとき話したいことを話して行きましょうか。意外と皆さん走り出しちゃうんですよ」といわれて。なんか良い意味でコーチングへのイメージが変わった気がしますね。
もちろん、目標を立てていくスタイルのコーチを望んでおられる方もいらっしゃると思うんですけど、僕のセッションでやっているのはどちらかというと内面を見つめ直す時間。そういうと薄く聞こえるかもしれないんですけど、コーチとのセッションを通してやっていることはそれですね。何をするかはさておいて、自分が何をするときに喜びを感じるかとか、さらに突き詰めて、喜びは何からきているのかなど。そうすると意外と幼児体験とか小さい時のことまで遡っていて、気づきという言葉でしか表現できないんですけど、自分の中に本当はあったはずなのに風化していた、錆び付いていた場所がわかりました。不思議なんですけど、コーチから何しましょうと言われるわけではなく、数週間の中で自然と自分で「こっちの方やってみようかな」という形で湧いてきます。
コーチングセッションの後は少し自分でアクセルを踏めば進めるというような車のアイドリング状態のようになった感じで、本当に不思議でした。自分が喜びだと感じることに気づいて、そっちの方に行けばいいんだなと気づいたというか。それをコーチに示してもらったというよりは自分がもう見えちゃったんで(笑)、今やるべきはこっちかなあという感じで。