韓国の「働き方改革」実例から学ぶ

2016年9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置されてから2年余りが経ちました。副業の解禁やテレワーク・フレックス勤務の拡大など、働き方に関する変化を耳にすることが多くなりました。2019年4月からは働き方改革関連法が施行となり、残業時間の上限規制や、有給休暇取得が義務化されます。2017年に行われた日経新聞の調査では、約8割が「働き方改革の効果を実感していない」と答えており、働き方改革の効果はなかなか実感されていないようです。今回は、韓国における「働き方改革」の実状をご紹介します。

今年の7月より文在寅(ムン・ジェイン)大統領のもと、韓国版「働き方改革」とも言える週52時間労働制が施行されました。今回の法改正により、今まで最大68時間だった労働時間が、16時間短縮されたことになります。改正前は、週5日勤務の場合で1日の勤務時間が13.6時間。52時間労働制の下では、これが10.4時間と1日あたり3時間以上も短縮される計算になります。

韓国企業では、通常の業務以外に部内の会食やレクリエーション、ワークショップという名で開催される社員の親睦イベントなど、業務なのか業務外なのか判断がつきにくいグレーソーンにあたるものが多く存在しています。社員間の「親睦」が主目的であれば業務時間には該当しませんが、不参加の場合人事評価に影響したり、「できるだけ参加するように」と社内周知されるなど、線引きが難しいものも多くあります。우리(ウリ:韓国語で私たちの意)という言葉を多用し、団結や一体感を重要視する韓国社会の中では、これらのグレーゾーンにあたる時間が業務時間を大きく圧迫しているように感じます。その他にも、平日や休日に「自発的に」仕事をしている場合は労働時間外とみなされることも混乱のひとつとなっています。
韓国はOECD加盟国の中でメキシコに次ぐ第2位の労働時間で、4位である日本よりも長時間労働が慢性化しています。新法案の施行で、韓国の労働環境はどのように変わるのでしょうか。