教科書のない取り組み –豊かな最晩年をつくる− 医療法人社団慶成会 青梅慶友病院 理事長 大塚太郎先生【後編】

国も答えを持っていないことにどう取り組むか

−これからさらに取り組みたいことはどんなことですか。

これから取り組みたいことはこれまで考えてきたこととほとんど代わり映えはしないんだけど、人生最後どんな状態になっても、「ああここで最後すごしてよかったな」とか、「一番望むのは慶友病院で人生を終えることだ」と思われる場所にしたいです。「御宅のお父さん慶友病院で最期を迎えたの?本当にそれは幸せね」と、「親孝行したわね」と言われる場所でありたい。大切な友人などに親の介護や看取りの相談を受けたときに、その方がどんな状態であったとしても「それだったら絶対に慶友につれてきたほうがいいよ」と、いつも絶対的な自信を持ってお勧めできる状態にしておくことが大命題です。そこに更に近づくにはもう少し規模は小さくてもいいかなと思っています。

人生最後を看るために究極的に必要なことは「個別対応」だと思うんです。もちろんパッケージとしてのサービスはあるんだけども、それぞれの患者様やご家族様に合わせた個別サービスを提供することが必要です。しかしこれからの時代は労働力人口がどんどん激減していってしまいます。保険料や人件費はどんどん上がっていく。必然的に費用は今よりも高くなってしまうけれどそれだけの費用を払ってでもここだったら惜しくないと思って頂けるようなものにしたいと思っています。ただ、規模が小さければ細やかなサービスができて良いというものでもないと思っています。極端な話、10床しかなかったら、それでは私たちの経験が積み重なりませんし、進化のスピードも鈍るでしょう。うちの強みというのは常に700名の患者さんを看ていて年間250名の方が亡くなる事実に向き合っているということです。職員の経験値は飛躍的に伸びて、ここで3年くらい勤めると高齢者に対する終末期医療・介護の経験をたくさん積むことができます。だからここをトレーニング機関と位置付けて、トレーニングが終わったらもう一つレベルの違うところでサービスを展開するというのもありかなとも考えています。理想の状態を10割とした場合、現在は7~8割くらいできていると思っていますが9割、10割にするためにはどうすれば良いのか。医療介護制度は大きく変わるし、これから益々超高齢化社会になり急速に75歳以上年齢が増える一方で働く人もどんどん減っていく。その中で我々が展開すべき事業サービスとは一体なんだとか、どの形を目指して展開すべきかといったことは日々悩んでいるところではあります。