【研修導入事例】ウルシステムズ株式会社様 1on1の目的と実践研修&参加者インタビュー

ウルシステムズ株式会社 グループリーダー(GL)向け研修

このたび、弊社はウルシステムズ株式会社様にて
ウルシステムズにおける1on1の目的理解研修~メンバーのエンゲージメントを1on1で高める~
を2025年5月29日、30日の2日間にわたり実施いたしました。
本研修には、部下との1on1に日々取り組まれているグループリーダー(以下GL)層の皆様にご参加いただき、GL3名+テーブルコーチ(TC)1名の4名編成のグループを5組編成し、2日間で合計30名での実施となりました。

研修の背景と目的

研修の冒頭では、ウルシステムズ株式会社 代表取締役の横山 芳成様より今回の研修企画の目的についてお話しいただきました。

横山様は、会社の成長に伴う社員数の増加見込みについて触れられた上で、MBO面談だけではメンバーの気持ちや動機付けに向き合う機会が少なく、1on1も定型がなく手探りで行われがちであることを課題として挙げられました。今回の研修を通して改めてGL一人ひとりが1on1の位置づけを理解し、実践していくことで、効果的にメンバーのエンゲージメントの向上を期待していること、また、1on1を通じて得られる効果はパフォーマンスや顧客満足度の向上といった短期的な成果だけにとどまらず、離職率の低下など長期的なビジネスの成功にも繋がると、参加者の皆様に熱く語られました。

本研修では「信頼関係の構築」「精神的支援」「内省支援」の3つを柱に、1on1を通してメンバーの本音を引き出し、エンゲージメントを高めるための視点やスキルを深めていきました。

まずは自身を振り返る

最初のグループワークは各自の1on1 の実施状況、その理由の共有から始まりました。
「グループ人数が多いため時間を取るのが厳しいが、1on1は命綱」、「上からの指示で1on1をスタートした」、「リモートワークの中での貴重な会話の機会」、「自分がしゃべっているだけになっている現状を脱却したい」、「まだ意義を見出せない」など、各々の1on1に対する率直な意見交換がなされました。

その後、事前に配布したチェックリストを活用し、各自の「1on1」の在り方を振り返っていただきました。お互いのリストをのぞき込みながら関心を持つ姿勢が見られ、多くの参加者は半数以上の項目を実践していることが確認できました。一方で自身の1on1に対し
「フィードバックや深掘りが足りていない」、「褒めることに偏りがち」
など、具体的な課題感が挙がり、休憩時間も熱心に意見交換が続きました。

ロールプレイによる実践

次に行ったロールプレイでは、GL・メンバー・オブザーバーの3役に分かれて1on1のシミュレーションを行いました。
「自己肯定感の低い24歳の若手社員」というメンバー役の演技は難しいという声も上がる中で、なりきることで実際のメンバーの考えに共感できるのではないかという気づきが生まれました。

-メンバー役の声
悩みを打ち明けた時にあまり関心を示されず、「他には?」と聞かれることや、解決策を提案されるだけでは自分の発言を受け取ってもらったという感じがなく、寂しさが残るというリアルな気持ちが共有されました。また、悩みを聞いてもらいたい、解決してもらいたいと思っても正確に伝えることが難しいというもどかしさに気づく方も。
「周りが優秀なことに対し、自分は褒められていないように感じて不安」と打ち明けられた方は、「周りとの比較ではなく、過去の自分との比較をしてみるとどうだったか」というフィードバックを受け、視野が広がった実感があったとのことです。
確かな手ごたえを得ながら、1on1の意義を体感されたグループも見受けられました。

-GL役の気づき
事実確認を重視して話を進め過ぎると相手を追い詰めてしまう懸念に気づかれた方がいらっしゃいました。特にメンバーの話に対し「問題を解決する」ことのみを目的とした自身のアプローチについて、オブザーバーからフィードバックを受け改めて気づかされたとの感想もありました。
一方で、「1on1がますます苦手になった」「解決策を提示するから話してほしい、という気持ちで臨んでいた」と振り返られる方も。同じGL層同士だからこそ、率直な意見交換から気づきへ繋がる場面が見受けられたことが印象的でした。

相手の特性を見る

メンバーからの相談に対し、「課題を具体的に解決したい」と考える声に向けて
「ヒトへ向かうか・コトに向かうか」の違いを解説し、相手に合わせて使い分ける重要さを共有しました。ヒトに向かう場合には、1on1は問題を解決するよりも、相手の内面を重視し個人的な思いや感情を引き出すことが重要になってくることを確認し、後半のロールプレイへと移りました。

メンバーの本音を引き出すためには

研修の後半では「どうすればメンバーの本音を引き出せるか?」を重点に、再度各テーブルでロールプレイを繰り返しました。

・相手の価値観や視点を大切にする
・質問の力でメンバーの頭を動かす
・観察者としてフィードバックの視点を磨く

これらを意識し、最初のロールプレイとはまた違った「仕事に対して消極的なベテラン」というメンバー役を相手に1on1を実施し、参加者同士のベストプラクティスを共有していただきました。
1回目のロールプレイと比べ、役への入り込み具合が増し各グループ苦戦する中で、共通の話題を深堀して信頼関係を構築する方や、お互いネガティブフィードバックをすることで対等性を意識する方などそれぞれの1on1の進め方の特徴が顕著に表れる時間となりました。

GLインタビュー 松尾 鉄太郎様

今回の研修を受けられたGLの松尾様へ、1on1やチーム、GLに対する考えをインタビューさせていただきました。

― 現在のご担当業務についてお聞かせください。
松尾様:ウルシステムズには着任して9年になります。現在は、金融系のお客様向けの中長期プロジェクトにおいて、企画構想段階から開発フェーズまで一貫して関わっています。特に上流工程からご支援するケースが多く、お客様からは「ウルシステムズのメンバーを増やしてもいいので確実に成果を出してほしい」との信頼をいただいています。その期待の大きさを日々実感する一方で、責任の重さも強く感じています。
私は新卒以来20年以上IT業界に身を置き、プログラマー、システムエンジニアを経て、現在はコンサルティング業務に従事し9年目になります。入社前は成果重視でドライな印象を持っていましたが、ウルシステムズの文化はそのイメージとは大きく異なり、人を大切にする温かさがあります。今回の1on1研修では、ウルシステムズの「人を大切にする文化」に向き合う中で、1on1は単なる業務の振り返りではなく、相手の内面にしっかりと耳を傾ける時間なのだと、あらためてその意義を感じました。

― 研修参加前後で、印象の変化はありましたか?
松尾様:はい。これまでのキャリアでは、問題解決に向けたロジカルな思考が中心で、特に開発現場では感情よりも成果にフォーカスしていました。しかし、今は仕事を「楽しむ」「意味づける」ことの重要性を強く感じています。今回の研修では、感情や価値観に寄り添うアプローチが、パフォーマンス向上にも繋がることを学ぶことができました。1on1は、単なる業務確認の場ではなく、相手のコンディションや気持ちを整えるための「土台」になると感じています。

― 以前は課題解決型に偏っていたのでしょうか?
松尾様:はい。キャリアを通じて、論理的な問題解決能力は磨かれてきたと思いますが、それだけではメンバーの力を十分に引き出せない場面もあると考えています。仕事は最終的に「人と人」で進めるもの。AIにはできない、人の感情や価値観に寄り添うことの大切さを、今回改めて認識しました。成果を求める姿勢は大切にしつつも、1on1を通して「人としての関わり」を深めていきたいと考えています。

― メンバーとの1on1で、課題として感じることはありますか?
松尾様:特に20代~30代前半の若手メンバーとは、価値観の違いを実感することがあります。私は、いわゆる「昭和型」の「負けたくない」「なにくそ精神」で育ってきましたが、今の若手はもっと自然体で、自分らしさや楽しさを重視しているように見えています。目指す方向性は同じでも、伝え方や接し方は変える必要があると感じています。

― 課題解決型と寄り添い型を使い分けていらっしゃるのでしょうか?
松尾様:正直なところ頭の中で明確に切り替えることが十分にできていなかったと感じています。今回の研修を通じて、相手の気持ちに目を向けることがパフォーマンスにも影響するというお話を聞いて、内面のコンディションを整えることが大事だと改めて実感しました。また、「相手はヒト型か・コト型か」という視点を踏まえた接し方の重要性に気づき、実践していこうと思いました。

― 他にも研修での新たな気づきや課題はありましたか?
松尾様:特に印象に残っているのは、「相手がヒト型かコト型か」を見極めたうえでアプローチするという視点です。1on1の30分という限られた時間の中でも、相手の受け取り方に意識を向けることで、より良い関係性が築けると感じました。これまでは、指摘を伝えて終わり、という場面もあったのですが、今後は対話を通じて、お互いの理解を深める場にしていきたいと思っています。

― 松尾様が目指すグループリーダー像を教えてください。
松尾様:現場感覚を持ち続けながら、戦略的な視点も併せ持つリーダーでありたいと思っています。そして、メンバーの上や前に立つのではなく、「円の中心」に立つような存在でありたい。中心にいることで、メンバーの個性や強みを把握し、最適な組み合わせや補完関係を見出すことで、グループ全体のパフォーマンスを最大限に引き出すリーダーを目指していきます。

研修・インタビューを通じて

今回の研修では、ウルシステムズ株式会社様の1on1の現状と課題を振り返りながら、「相手に寄り添う対話」の在り方を探究する時間となりました。
今後の1on1実践において、少しでもお役に立てる学びの場を提供できたことを心よりうれしく思っております。