個人の幸せと企業や国の成長は両立するのか【前編】
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 前野隆司教授


−自分が楽しく幸せであるということを優先すると、現状に満足し挑戦しなくなってしまうこともあるように思います。社員の幸福と企業が社員に求めるものが相反することはないのでしょうか。

 幸せだと個人のパフォーマンスが上がることが分かっています。社員が幸せだと一人一人のパフォーマンスが上がるから結果として企業が儲かると考えられます。しかし社員が不幸せだと必ず儲からないというわけではないところがややこしい。「幸せなんて関係ない。無理やり働かせれば儲かるんだよ」と考えている経営者が短期的に儲かっている例もたくさんあります。
 ただし、長期的なサステナビリティを見ると社員が幸せな方が良いと考えられます。社員が不幸でも、短期的には給料が多ければしばらくは働き続けるでしょう。しかし景気が悪くなって給料が下がると人が辞めてしまう。心の病気になる人も出てきてしまう。だから不幸な働き方だと、短期的には儲かるかもしれませんが長続きはしないと考えられます。社員の幸福と、企業が社員に求めるものが、短期的には相反するように見えることもあります。しかし、おそらく10年以上のスパンで考えるとみんなが活き活きと楽しそうにしているほうが企業としても繁栄すると思います。
 そもそもみんなが稼ぐ理由は何だろうと根本を考えると、幸せになるためです。幸せというのは人間の最終目標なのです。そこに至るプロセスはその人なりでいい。幸せになることが人間の目的なので、挑戦することが幸せだと思った人は挑戦すればいい。現状に満足してもいいし、努力しなくてもいい。挑戦しなくてもいい。今の状態が幸せなのであればそれでいいのではないでしょうか。